子供の頃に遊んだ農家の軒先があった。 日本民家園


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川崎市の多摩区の生田緑地にある日本民家園。東日本の古民家を中心23棟の建物が多摩丘陵に、それこそ昔の村のように並んでいる。
古民家とはいうもののよく考えてみれば子供のころ、周辺はこういった民家ばかりだったような気がする。
子供だったとはいえ、少しでも時代を共有する民家が古民家と呼ばれるということは、こちらもそろそろ古老の域か。いや大した人徳もなく故実にも通じぬままに歳だけ重ねた朴念仁を古老と称すのは厚顔であろう。

昭和30年頃というのは、よほどの都会や田舎でないかぎり、町と農村が近接していた。つまり、映画「三丁目の夕日」の商店街も「となりのトトロ」の田園風景もどちらも身近にあったわけだ。
丘を下った商店街より農家の方が近いものだから、おつかいでよく野菜を買いに行かされた。

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真夏でもひんやりした土間で野菜を買い物カゴに入れてもらった。真っ赤なトマトも青い胡瓜も取れたてで、子供ながらも美味いなぁと感じたものだった記憶がある。

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こういった農家には、たいてい同じ年頃の子供がいた。買い物カゴを置いて、そのまま庭で遊び出すのは子供心というものだ。なにしろ農家の庭は広いものだから遊ぶに事欠かない。
庭や庭続きの竹藪、はては里山まで繰り出すのも毎回のこと。夕餉の支度で野菜の到着を待っている母に何度叱られたことか。

板の間の上がり口に腰をかけてそんなことをぼんやり思い出していた。
日本民家園という場所は、ただ見学する場ではなく、「記憶の中をすごす場」という感じがする。丘陵の中に配置された建物がそのまま昔からこの地域にあった村落を再現したような錯覚を与えるのかもしれない。

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建物は富山の合掌造りから福島、長野、山梨、千葉等々東日本各地から集められている。その意味では野外博物館なのだろうが、一歩園の中に入ると、そこはまぎれもなく村落なのだ。道祖神が微笑んでいたり、水車がコトコトと回っていたり、農家の軒をくぐれば今にも旧友の声が聞こえそうになる。
小田急線向ヶ丘遊園駅から徒歩約15分。駐車場もあるのでクルマでいくもよし。
建物を見学というよりこの空気感に触れてもらいたい施設である。