チャレンジひとりドライブ

第十回「クロカン四駆にチャレンジ。オフロードを走ってみる」


出会いは工事現場

ずいぶん前のこと、赤城山麓の自然観察園を造成している現場に四駆で案内されたことがある。

ブルドーザーの跡しかない急勾配の道を四駆はゆさゆさと大揺れしながら登っていく。胃が飛び出しそうになりながらもその走破性に感心したものだ。

あのようなものすごい道を走るのはちょっと無理だが、それでも四駆というものを運転してみたいと思っていた。

四駆と消防車を運転してみたいというのは実は密かな夢なのである。消防車は無理にしても四駆はなんとかなるかもしれない。

四駆で走った後に大自然の中でパエリアを作って食べてみたいのだ。なぜパエリアなのか。とくに意味は無いけどちょっとオシャレでしょ。

 

四駆とは

「四駆」というのは四輪駆動車の略で、一般的なクルマが二輪駆動なのに対し、四輪全部が駆動するため、駆動力が強い。4WD(Four Wheel Drive)とか4×4(フォーバイフォーfour by four)とも呼ばれる。

四駆は駆動力に優れるため、スポーツセダンなどにも見られるが、私が乗りたかったのはクロカン四駆というもの。

クロカンとはクロスカントリーの略。つまり道なき道を走破するような頑丈一辺倒なクルマのこと。

最近はSUVとかライトクロカンとかおしゃれな四駆がいろいろあるのだが、あの時の工事中の山道をせっせと働く無骨な四駆に乗ってみたかったのである。

本格的クロカン四駆というのは、ラダーフレームというはしご状のシャーシー(クルマの土台)を採用しているもので、今のクルマの主流であるモノコックボディーと比べるとかなり頑丈に作られているらしい。

まあ、道なき道を行くのだから相当タフでなければならないのだろうが、そんなすごいクルマは運転できないなぁと思っていたら、知人がジムニーを貸してくれるという。

ジムニーはラダーフレームの本格クロカン四駆なのだそうだ。コンパクトなクルマだから私にでもとり回しができそうだ。

ついでだから四駆の運転指南役として一緒について来てくれるようその知人に頼んだ。

快諾を得て、ついでにアウトドアクッキング用品までゲット(知人はアウトドアに精通している)。

 

はじめてにぎる四駆のステアリング

まず点検。今回運転するジムニーは小さくてかわいい軽自動車だが、タイヤは車体の割りに大きい。175/80R16のDUELER H/L850を履いている。ガタイはかわいくてもクロカン四駆という主張を感じる。

さて、運転なのだが、座席が高い位置にある。小柄な私はよっこらしょと登る感じか。

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座ってみるとさすがにポジションは高い。視界が良いので運転はなんとかできそう。

このクルマは2WDと4WDの切り替えができ、さらに4WD-L(低速時)が選べる。一般路は2WDで行く。

というか、運転席で目に付いたのはその4WDの切り替えスイッチぐらい。あとは味も素っ気もない。必要なスイッチがあるだけという具合。ここまでくるとかえって気持ちがいいぐらいだ。

タイヤのおかげか、舗装路でのロードノイズはあまりないが、ちょっとしたギャップでゆさゆさ揺れる。室内もかなりエンジンの音が響く。ハンドリングもシャープではなく、おおざっぱな感じ。

というのがいつもはセダンを乗り回している私の感想。うーん四駆は舗装路を走っていると無骨というより無愛想なのか。

 

富士ヶ嶺オフロード

富士山麓に「富士ヶ嶺オフロード」というオフロード専用のコースがあるというのでそこを目指す。

まず、ダート&オフロードを安全に体験してから、通行が許可されている一般林道を走る、というのが同行してくれた師匠(この時点で知人は四駆走行の師匠に昇格)の指導である。

 

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中央高速道路ではいつものような心地よいリニアなドライブというわけにはいかず、エンジン音やら風切り音がゴーゴーとものすごい走行(音はすごいがスピードはたいしたことがない)を体験しつつ河口湖ICから富士ヶ嶺方面に向かう。

かわいらしいゲートをくぐり管理棟で受付なのだが、まずコースの広さに驚いた。しかも何。あの正面のものすごい坂(ロングヒルクライムという)は。ここを走るのですか。もしかして。

「いや、初心者が走れる外周路だけ行くから大丈夫。あの坂は登るけど」って師匠。やっぱ登るのではないですか。

富士ヶ嶺オフロードは朝霧高原に近い富士の裾野にある約2.4万坪の敷地に作られたオフロードコース。ビギナーから上級のトライアラーまで楽しめる。

コースがオープンしたのは平成元年5月。利用者は関東だけでなく、全国から訪れるそうだ。

レースイベントや自動車メーカーの走行会にもよく使われるとのこと。

オーナーの渡辺卯僖男さんは、クロカン四駆やオフロードバイクのユーザーに自然を荒らさず、思い切りオフロードを楽しんでもらいたいとの願いからコースを設営したという。すばらしい。

 

4WD走行

さっそくコースに出る。といってもまずはフラットなダートから慣れることに。

4WDに切り替えるとハンドルの切れがちょっと重くなる。カーブも膨らみ気味になるらしい。

平地をしばらく走るが、小さい起伏でも車体が大きく揺れる。それでも普段、私が乗っているクルマだったら確実に底を擦るなと思うようなギャップも平然と越えていく。これはやはり面白い。

 

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ちょっとしたギャップや埋めてあるタイヤを乗り越えることにもチャレンジ。タイヤなどの乗り越えには4WD-Lに切り替える。むやみにアクセルを踏むのではなく、軽く反動をつけてじっくり越えるのがコツ。

師匠は舗装路重視なのでタイヤはDUELER H/L850を履いているが、問題なくゆっさもっさと起伏を乗り越えていく。着地の衝撃が結構あり、タイヤにもかなりの負荷がかかっているのだろうが、それをうまく分散させる構造になっているのだろう。タイヤはただ黒いだけのゴムの塊ではないのだ、と改めて実感する。

調子に乗って、あそこの池を越えようとか岩を越えたいとか言い出して師匠に止められた。

いよいよヒルクライムにチャレンジ。この坂は斜度があるだけでなく、距離も長い。富士ヶ嶺オフロードの頂上まで一気に上るのだ。

最初はちょっと登ったらそのままバックで降るように指示され、それを3,4回繰り返す。

オフロード走行は、むやみに進むだけではなくリカバリー技術も必要とか。とくにヒルクライムで車体が斜めにでもなろうものなら横転の危険もある。まっすぐ降る練習も必要なのだ。

 

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少し慣れたところで、一気に頂上までクリア。

いろいろなコースを走ったが(とはいってもトライアルセクションは走らせてもらえなかった)、超怖かったのはヒルダウン。坂を下る直前はボンネットに遮られ下が見えなくなるのだ。これはすさまじく怖い。路面があることがわかっていても怖い。

 

年甲斐も無くワーワーキャーキャー言いながら走っていたのだが、そこで気がついた。

クロカン四駆というのはこういった悪路を走破するためにセッティングされているのだ。当たり前だが、舗装路を心地よく走るためではない。

舗装路や高速での騒音やハンドリングのことやらを批判がましく(実はぶーぶー口に出していた)言ったことに深く反省。

と同時に、ダートやオフロード走行というのは、舗装路ではわからない危険が多いこともわかった。

やはりいきなり林道を走ろうというのは少々乱暴だ。こういったコースを体験してからでも遅くない。

 

林道体験

一応、走行感覚と怖さも経験したので、林道をチャレンジすることにした。

ただ富士山も最近は未舗装路が減っているし、安全対策から車両乗り入れ禁止の林道も多い。

ここでは林道というほど長くはないが、富士吉田近辺にある走行可能な道を走ることにした。

とは言っても初めての道である。 細いし、草木でコーナーの向こうが見えないし、進むにつれて道が荒れてくる。ここはゆっくり攻めていくにかぎる。

 

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林道は対向車にも気をつけなければいけない。埼玉県秩父の中津川林道などは、四駆だけでなくオフロードバイクもいて交通量が多いらしい。スピードを出すのは厳禁だ。

手堅く林道を行くと、ちょっとした広場に着いた。ランチタイムにちょうどいい。

 

ランチタイム

さあ、パエリアを作るぞ。

クロカン四駆で到達した大自然に囲まれてパエリアを食べるというのは贅沢の極みではありませんか。

師匠にコンロ(ストーブとかバーナーと言うらしい)や鍋(コッヘルと言うらしい)を用意していただき早速調理。さほど手間がかかるものではない。

パエリア鍋をフライパンで代用したため、多少野趣っぽいが、これはこれでクロカンに似合うようだ。

空気のおいしさもあって美味しくいただいた。

 

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パエリアとコーヒーをいただきながら四駆について想いを巡らせてみた。

悪路やオフロードを行くのは、「ドライブ」という気持ちよくクルーズする概念と別次元にあるように思われる。つまり「走破」するという一言がすべてを表している。ダート路面の林道だとしても、この緊張感は変わらない。

四駆で悪路を走ると運転しているというより、悪路走破用の機械を操作している気分になる。それがすごく楽しいし、未開の地を四駆でいく冒険へのロマンも若干ながらわかるような気がしてくる。

もちろんそれは危険と隣り合わせであり、それなりの技術と覚悟が必要だ。

残念ながら、関東では多くの林道が通行止めの措置をとられている。林道敷設の本来の目的が山林管理などにあることを考えれば、これは仕方が無いことだろう。

本格的クロカン四駆を手軽に楽しむなら、やはり富士ヶ嶺オフロードなどの管理されたコースを利用したい。

もちろん降雪地域や未舗装の山道が多い地域などではレジャーではなく有効な交通手段として今後も活躍するだろう。

初体験だったが、オフロード「走破」の魅力が少しわかったチャレンジドライブであった。

 

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文 岡よしみ

 

取材協力 富士ヶ嶺オフロード TEL0555-21-8975 山梨県南都留郡富士河口湖町富士ヶ嶺466