第三回「地方の博物館を見に行きたい」


地方の博物館に行こう

もともと、博物館や歴史館が好きなのだが、家族旅行で「行きたい」などと唱えると必ず却下の憂き目にあった。その地域の歴史や文化を知ることで、旅行が数倍楽しくなると思うのだが、子供達は学校の教育旅行を連想し、つまらないと感じたのだろう。

ということで、今回のチャレンジひとりドライブは、じっくり見たかった地方の博物館に決めた。

一人で行くから、展示物に没頭することが出来る。間違っても誰かにせかされることはない。

前回訪れた、秩父市吉田の祭りと歴史を展示した「龍勢会館」は素晴らしかった。

地域の博物館などで大切に保存されている展示品は、その地に生きた人々の営みや命の息吹さえ感じることが出来る。

何度か訪れたことのある会津若松に「福島県立博物館」という、じっくり見るにはうってつけの立派な博物館がある。収蔵品が多いと聞いており、ずっと行ってみたかったところだ。ここにしよう。

 

長距離の高速道路走行

「遠出するならゆったりしたクルマの方が楽だろう」ということで、今回は少し大きめのセダンで行くことにした。長距離の高速運転ということもあり、出発前の点検はさらにしっかりやる。安心してひとりドライブをするための基本だ。

高速道路では普段以上に余裕を持って走ることにしている。好きな音楽をかけ、適度な速度で走り、適度に休む。少なくとも一時間に一回は休む。これが疲れないコツ。

SAを覗くのが楽しみの一つなので、時間はかかっても結局快適で楽なドライブが満喫できることになる。

東北自動車道も那須高原あたりからは、いよいよ遠くに来た感じがする。

郡山から磐越自動車道に入ると急に山々が迫ってくる。もう少しで会津若松なのだが、昼食も兼ねて「磐梯SA」に入る。

 

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館内では大きな赤べこが首を振って迎えてくれた。郷土色が濃くなって、一人で遠くまで来たという実感が湧いてくる。

 

福島県立博物館

田園風景を横目に福島県立博物館へ向かう。会津の街並は相変わらず優しく迎えてくれた。

福島県立博物館は鶴ヶ城に隣接しており、広い館内では、旧石器時代から現在に至るまで、福島の歴史や文化を時代別に紹介している。年間3,4回の大型企画展が行われており、それ以外にもテーマ展、ポイント展など年間を通して展示に工夫が凝らされている。夜に博物館を探検するナイトミュージアムという楽しそうな催し物もあるとか。

 

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今回は、東日本大震災で大きな被害を受けた福島県浜通りの復興事業に伴う発掘作業で、新たに発見された出土品などによる企画展があり、これには感銘を受けた。

「未来を見通した今の活動が大切」と専門学芸員の森幸彦さんは言う。モノには伝える力がある。過去を知らずして未来は創造しえない。だからこそ今残さないと失われるものを保存し、未来に残すのが博物館の役割という言葉に深く納得した。

この企画展「被災地からの考古学1―福島県浜通り地方の原始・古代」では、原始から古代を取り上げ、東北と関東の橋渡しとなっていた浜通りの地域特性を明らかにしている。

 

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中でも「浜通り発福島の顔」展示コーナーでは、丸塚古墳(相馬市)から出土した女子埴輪をはじめ、いろいろな古代の「顔」が展示され、なんとも可愛らしく優しい表情で和ませてくれる。

 

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福島県立博物館は常設展も含めてスケールの大きい博物館なのだが、どの展示も郷土への深い愛情と未来へ伝承していく強い使命感が感じられ、活力に満ちている。パワーをもらったような気がした。と同時に福島という地域がより身近に感じられるようになっていた。

 

奥会津博物館

次に向かったのは、奥会津博物館。山間の街道を行くこと1時間あまり、深い森の中に広大な敷地が開ける。博物館の建物は古民家園と併設されており、周囲にはキャンプ場の施設などがある。

奥会津博物館の開設は、地元田島の民具収集家、佐藤耕四郎、慧(さかし)親子が集めた民具コレクションから始まる。奥会津という日本有数の豪雪地帯が生んだ知恵の結晶ともいえる民具を文化遺産として保存、継承しようとした佐藤民具コレクション。これが田島町(現南会津町)に寄贈され、博物館の基礎となったそうだ。

館内は、山(樵、木地師)、川(農業、漁撈)、道(街道運送)のゾーンに別れ、国の重要有形民俗文化財を中心に数多くの民具、用具が展示されている。

 

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「山」のゾーンでは、奥会津の大きな産業の一つであった挽木地(会津漆器の木地づくり)にたずさわった樵や木地師の木工具類が展示され、当時の山仕事や習俗を垣間見ることができる。

 

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「川」のゾーンでは、漁に使う銛(もり)をはじめ、樏(かんじき)やスキーなど豪雪地帯ならではの生活具から奥会津の厳しい環境と人々の知恵が伝わってくる。水が不可欠な農業や染物、養蚕もこちら。

 

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興味深いのは「道」のゾーンで、若松から今市まで街道を行き来した運送業者である中付駑者(なかつけどしゃ)が使用した鞍(くら)などの馬具。専用の馬宿を移築した建物などがある。

奥会津には農地が少なく、米の代わりに金銭で年貢を納めたという。そのために換金作物(青苧や麻など)は重要な産物だった。中付駑者は街道運送だけでなく、これらに換金作物をはじめとする地域産業の重要な運送手段でもあったという(渡辺康人研究員談)。

雪で閉鎖されるこの地域は独特な生活文化を生み、それにあわせた用具、民具を生み出した。膨大なこれらの民具からは、過酷な豪雪地帯とそこで生き抜いた人々の知恵が見えてくる。

 

地方の博物館で見えたもの

大規模な過去を収集し未来を見つめる博物館と、地域に伝わり続けた民具を大切に守り続ける博物館。

二つの博物館を見て、歴史に触れ、その時々の文化に触れることができた。

出土した土器や独特の民具を前にして、想像の翼を広げ、営まれた生活に思いをめぐらせると、人々の顔が見えてくる。この地域への親近感が高まる。

地方の博物館で「知る」ことは地域との距離を縮めることなのだということを再認識した。

今回のひとりドライブは実に有意義だった。私にはまだまだ知らないことが沢山ある。膨らむ探究心をひとつずつ、埋めていきたい。

 

走行距離は約620km。かなり心が満たされた帰路の高速道路ドライブは、タイヤが静かなこともあり、疲れもなく、心地のよい運転を楽しむことができた。

静かなタイヤと余裕を持った運転は長距離ドライブの秘訣だとここでまた一つ発見。

長距離にも若干自信がついたところで次の出会いが楽しみになってきた。もっと先に行って見よう。

 

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 文 岡よしみ

 

<取材協力>

福島県立博物館 電話0242-28-6000

奥会津博物館  電話0241-66-3077